薮田式自動醪搾機 (通称ヤブタ) によるしぼり

2月末の朝、常磐道那珂インターを下りた時の気温は4℃。矢澤酒造店がある矢祭町に近づくにつれ、気温は下がり矢祭町では0℃。酒蔵に到着する直前には小雪がチラチラ舞い始めました❄️ そんな寒い朝でしたが、蔵の皆さんはお仕事を始めていました。

前日、お酒のしぼりがあり、「粕はがし」という作業をしているのだそうです。ヤブタの板と板の間に残った酒粕 (これが板粕) をヘラを使ってはがします。1枚はがし終わる度にお二人で「せーのっ!」と声をかけながら、何度も何度も板を動かしていました。

酒蔵の仕事は朝が早いです


「粕はがし」が終了すると、この日のお酒のしぼりが始まりました。仕込みタンク下部の穴からホースを経由して、お酒 (モロミ) がヤブタに流れていきます。


ヤブタに入ったお酒 (モロミ) が、ヤブタ下部からお酒となって小型タンクに流れ始めました。このタンクの上部には小さな穴が開いていて、そこからはお酒の良い香りがしてきました🙂


時々、杜氏さんが小型タンクのガラス蓋を開け、中の様子を確認していました。ヤブタから流れ出るお酒の量が少ないと水琴窟のようなきれいな音がしたり、量が多いとシャーッという「ザ・搾りたて!」のような音がします。


小型タンクに貯まったお酒は、ホースを経由して貯蔵タンクへ送られます。


杜氏さんは時々、仕込みタンクのお酒 (モロミ) をかき混ぜていました。

タンクのお酒 (モロミ) が、だいぶ減ってきました


いよいよ仕込みタンクのお酒 (モロミ) がなくなります。

ハケのようなものを使って、最後まで丁寧にヤブタに送り込みます
タンクの下では、お酒(モロミ)がヤブタに送り込まれたことを杜氏さんが確認

杜氏さんが仕込みタンクからヤブタまで、最終確認をしていました。

聴こえてくる音楽は、酒蔵の中で流れているクラッシックです


しぼりは午前中に開始し、仕込みタンクのお酒 (モロミ) がすべてヤブタに入ったのは、夕方。私の想像をはるかに超える時間でした👀

しかし、これで終了ではありませんでした。ヤブタに入ったお酒 (モロミ) に圧力をかけ、一晩かかってしぼり終わります。薮田産業のHPにはヤブタについて「従来の槽搾りで48時間以上必要とした醪搾りの工程を24時間に短縮させただけでなく、清酒の品質向上と・・・」とあります。ヤブタは画期的な機械だったのですね

すごいんですね、ヤブタさん!
この細い管から板に空気を入れ、圧力でお酒がしぼられる仕組み



翌朝です🌄 前日のお酒のしぼりが終わっていました。この日は矢澤社長も「粕はがし」をしました。可愛いフリフリの割烹着もお似合いです✨✨


今回は仕込みタンクのお酒 (モロミ) の量が多く、厚い酒粕でした。ヘラを使ってスッとはがしていきます。すべての板と板の間の粕をはがすのに数時間かかります。ずっと右手を動かし続け、大変そうでした。


今回の酒粕は牛や豚の飼料になるそうです。25Kgずつ袋に詰めます。

出来たての酒粕はとても良い香り
分銅を使うハカリ。どのような仕組みか分かりません・・・
酒粕を入れるのは、元々酒米が入っていた米袋。リサイクルです


この袋を持ってみようと思ったのですが、びくともしませんでした。そんな袋を社長や男性蔵人はヒョイヒョイ運ぶのですから、カッコ良かったです💪

1つの仕込みタンクから、こんなにたくさんの酒粕がとれました
重いのに、なんだか楽しそう。


蔵の方々の会話、私は聞き取れないこともあるのですが、社長は聞き取れるようで、蔵の方々と楽しそうに笑いながら働いているのが印象的でした。すっかり福島の言葉にも精通しているようです。(正確に言うと、矢祭町付近は福島の言葉というより、茨城の言葉だそうです。)


しぼられたお酒はタンクで貯蔵され、瓶詰め・出荷の日を待ちます。
お忙しい時期に、酒蔵内を見学させてくださり、ありがとうございました‼️

機械放冷の作業

晴天の2月、酒蔵の屋根から湯気が立ち上っていました☀


蔵の中では、甑から蒸気が勢いよく上がっています。この日の蒸米は掛米になります。


スコップを持つと、東京にいらっしゃる時の矢澤社長より、男らしく見えました 💪💪


蒸された酒米を甑からスコップで放冷機に移し、温度を下げます。下の動画の場合、右から左へ酒米が流れています。流れている間に風を当てられ、冷まされる仕組みです。社長と副杜氏で酒米をほぐしています。


放冷機で冷まされた酒米はエアシューターでタンクに運ばれます。画面右側の水色の蛇腹を経由し、白くフワフワ動いている布の所から酒米がポロッ、パサパサパサー、と空気と共に勢いよくタンクに飛び込んできます。杜氏さんが醪の温度を確認しながら、長い櫂を巧みに動かしていました。


以前このブログで紹介した、布で蒸米をあおぎながら冷ます方法と比べると、機械放冷は時間や人員が省略出来るというメリットがありますが、お米が機械的に流れていくので温度管理は難しいそうです。



蔵に伺った日は寒かったですが、花のつぼみは膨らんでいます。この冬の仕込みが終わりに近づいていることを感じた一日でした🌱

結果発表 !

何の結果かというと、矢澤酒造店で働く方々にインタビューした「矢澤社長の魅力✨」です。

  • 時間にムダなく作業をススメてくれるのでスムーズに仕事が終わる。
  • 社員に指示するだけでなく、社長自ら率先して仕事をするところ。つねに動いている。
  • ユーモアがあるのでお茶の時間など、つねに笑いがあり楽しい。社長感がないところ。
  • 酒づくりが終わると社員旅行に連れて行ってくれるところ。


今まで数回、酒蔵見学をさせていただいている時の様子からも、全て「うん、うん」と、うなづけます🙂 蔵の方々と社長の関係がよく分かるインタビュー結果でした。寒い時期のお酒造りは重労働でしょうが、こんな職場なら辛さも吹き飛びそうですね。


社長と共に働く蔵の方々のお仕事の一部 (洗米など) を紹介します。

酒米を洗います。(洗米)
杜氏さんは浸漬時間と脱水時間の2つのタイマーとにらめっこです
脱水が終了すると、酒米を甑に入れます。一生かかっても食べられないほどのお米の量です。
甑に入れた酒米は蓋をし、一晩おかれ、翌朝蒸されます。
蒸した酒米は熱々で、思いの外、硬いです。そして、何よりも重そうです。
機械放冷の場合は、スコップで放冷機に酒米を移動させます。
蒸された酒米は麹米や掛米になります。掛米の温度を温度計で確認している様子。
仕込みで使用された道具たちは、すぐに洗浄され、中庭に干されます


社長を支えている蔵の皆様の様子を紹介しました。というわけで、社長が写っていない写真ばかり選んでみました。
酒蔵の皆様、インタビューにご協力ありがとうございました❗これからも、東京から矢澤酒造店、「南郷」を応援します🎵

南郷を楽しむ会

福島県矢祭町にある矢澤酒造店から車で数分のところにある「さかな家」さんの「第7回 南郷を楽しむ会 その2」に参加してきました。毎年1回開催されているというこの会ですが、私が参加したのは「その2」。2月15日に開催された会がすぐに満席になってしまったとのことで、今年は特別に2月29日にも追加開催されることになりました。(というわけで、「その2」です。)


「さかな家」さんは矢祭町のメインストリートにある「丸安魚店🐟」というお魚屋さんの息子さんが営んでいるお料理屋さんです。(店名も納得💡)


予告によると、今回の「南郷を楽しむ会」の目玉は12年前の「新玉の酒」です。子年生まれの「さかな家」さんのご主人が12年前に購入した貴重な「新玉の酒」を開栓してくださるそうです‼️


夕刻、矢澤社長が「さかな家」さんに到着すると女将が早速、「お客様にお出しする前に、12年前のお酒の味を確認してください。」と。社長は香りをかぎ「酸味が残っている香りですね。」と。1口飲んで「ビンテージ感があり、いいですよ。よく冷やして提供してください。」と。藤井顧問は「時間が経たないと出ない味がよく出ています。保存状態も良かったと思います。」と。お二人からのお墨付きで、本日参加のお客様に安心して楽しんでいただけることになりました🎵


今日の乾杯のお酒はオンザロックで「特別純米酒 銀箭」です。社長が蔵を継いでから初めて作ったお酒であること、淡い炭酸が残っていることなどお話されました。


乾杯の音頭はK様。なんとK様はこの後、お車を運転するとのことで乾杯から最後までずーっと南郷の仕込み水でした。美味しいお酒の会に参加してお酒を飲めないなんて、苦行としか言い様がありません😵


本日の献立です。2部に分かれていて、前半は「勉強会」、後半は「宴」です。勉強会は矢澤酒造店のお酒と「さかな家」さんのお料理のペアリングです。勉強会用のお酒3種類について、社長から説明もありました。


まずは「いちごの白和え × 大吟醸 月と虹」。「月と虹」は香りを楽しむお酒だそうです。お酒のフルーティさと甘みが、いちごのフルーティさと甘みと同調を味わうように考案されたペアリング。矢祭産のいちごを口に残したままお酒を含むといちごの美味しさが倍増しました🍓


次は「ホタルイカガーリックバター 油麩添え × 南郷 生詰 吟醸酒」。「南郷 生詰 吟醸酒」は透明感のあるお酒とのこと。お酒に合わせる「ホタルイカガーリックバター 油麩添え」、とーっても美味しかったです😋元来、オイル系が大好きな私なので、この美味しさをずっと味わっていたかったのですが、社長の提案通り「南郷 生詰 吟醸酒」をいただくと、あら不思議。口中がさっぱりして、次のお料理が待ち遠しくなりました😄 お酒で洗い流すのは、次の料理と前のお料理の味が混ざらないようにするための重要な効果があるそうです。


三品目は「特製グリーンカレー × 南郷純米酒」です。「南郷純米酒」は南郷を代表する、旨口のお酒です。社長は「炊きたての白米をイメージしてカレーと合わせてください。」と。「南郷純米酒」とカレーの組み合わせは、お酒のイベントの際、社長が毎回お客様に勧めている組み合わせです。勉強会の3品中、私は「特製グリーンカレー × 南郷純米酒」が一番マッチしていました👍


前半の「勉強会」が終了すると、後半の「宴」へ突入。「宴」では用意された南郷のお酒が全部飲み放題です!皆さん、お好きなお酒をお好きなだけ、お料理と共に楽しまれていました🍶


藤井顧問からは、お酒造りに関する様々な道具の説明がありました。木の香りがつかないように瀬戸物で作られた保存容器や柿渋(防腐剤の効果がある)が塗られた手桶など、酒蔵の歴史を感じる品々でした。


いよいよ12年前の「新玉の酒」の登場です。参加した方からは「高級なシェリー酒みたい。」などの感想がありました。12年前の「新玉の酒」は「ちよにしき」ですが、現在の「新玉の酒」は「美山錦」で仕込んでいます。


子年トリオです。藤井顧問も子年です。皆さんの笑顔で、「南郷を楽しむ会」が大盛況だったことがお分かりいただけると思います🙂


矢祭産の小松菜を使った煮びたし、矢祭産の卵を使った茶わん蒸し、南郷の酒粕を使ったさわらの酒粕漬け等々、たくさんのお料理を美味しくいただきました🍴


締めの挨拶はS様。「南郷を楽しむ会」に参加したいと思いながらも、ずっと参加出来ず、第7回目の今回念願叶って参加できたというS様。そんなS様のお母さまは365日、毎日毎日、夕方6時なると南郷のお酒を飲むのが日課。「南郷のお酒以外は飲めない」と仰っているそうです✨✨


この日は、矢澤酒造店の前身である藤井酒造店の時代から、酒蔵の中の様々な建具を作り、修繕してくださっている建具屋さんや「ノーマル(南郷普通酒のこと)がこんだけ旨いんだから、他の酒を飲む必要がないんですよ~😄」と力説する酒屋さんなどと出会いました。矢澤酒造店が矢祭町の造り酒屋であることを実感した会でした。又、私など及ばないほどの筋金入りの「南郷ファン」が矢祭町にたくさんいらっしゃることも分かりました。


「さかな家」さんは、お料理はもちろんですが、はにかんだ笑顔のご主人と明るい笑顔の女将のコンビも魅力です。矢祭町のいいところを広めていこうと考えて、矢祭町のいいところの一つが「南郷」であることから「南郷を楽しむ会」が開催されるようになったとのこと。来年の「南郷を楽しむ会」も楽しみです💕 お土産に「さかな家」さんオリジナルラベルの「南郷純米酒」をいただきました。


(3/7追記)
今回の会について、酒蔵の地元紙「東白日報」の3/5(木)に大きく掲載されました。お酒とお料理の紹介や、子年トリオと12年前の「新玉の酒」の写真等と共に、参加者皆様が「南郷を楽しむ会」を満喫された様子が紹介されています😄